← 怪談一覧へ戻る
広告
ヒトコワ

毎日同じ席にいる男

2026年5月14日

都内へ通勤するため、毎朝同じ時間の電車に乗っていた。

7時12分発。
先頭から二両目。
ドア横の端の席。

毎日ほとんど同じ人間が乗っているから、嫌でも顔を覚える。

その中に、必ず同じ席に座る男がいた。

30代後半くらい。
黒いコートに、四角いメガネ。

特徴は少ないのに、なぜか異様に印象に残る男だった。

理由は簡単で、その男、毎朝ずっとこっちを見ていたから。

最初は偶然だと思っていた。

でも違った。

電車に乗る。
席へ座る。
顔を上げる。

必ず目が合う。

スマホを見るでもなく、本を読むでもなく、ただこっちを見ている。

気持ち悪かったけど、直接何かされるわけでもない。

だから無視していた。

ある朝、寝坊した。

いつもの電車に乗れず、一本遅い電車へ飛び乗った。

「今日はいないか」

そう思って座った瞬間、向かいの席にその男がいた。

目が合った。

男は少し笑っていた。

鳥肌が立った。

その日はたまたまだと思おうとした。

でも翌日。

また一本遅い電車に乗った。

またいる。

今度は同じ車両の少し離れた場所から、こっちを見ていた。

それから怖くなって、通勤時間を変えた。

乗る車両も変えた。

でも見つかる。

ホームの反対側。

改札の近く。

会社近くのコンビニ。

絶対に偶然じゃない。

ある夜、会社帰り。

最寄駅を出たところで、後ろから声をかけられた。

「あの」

振り返る。

あの男だった。

頭が真っ白になった。

男は少し困った顔で言った。

「すみません、気づいてました?」

何も言えなかった。

すると男は続けた。

「毎日、同じ時間に同じ場所にいるから、運命かなって思って」

笑っていた。

本気で。

「最近、時間変えましたよね?」

その瞬間、全身の血が冷えた。

見られてた。

ずっと。

男はポケットからスマホを取り出した。

画面が一瞬見えた。

そこには、自分の後ろ姿の写真が大量に保存されていた。

駅。

コンビニ。

会社前。

マンション近く。

全部、気づかないうちに撮られていた。

あなたの怖い体験を募集しています

実話怪談・不思議な体験・意味が分かると怖い話などを募集しています。

投稿フォームへ

関連怪談

ヒトコワ

深夜の訪問者

不思議

不思議

ヒトコワ

毎日同じ席にいる男

ランダム怪談を読む