配達員

一人暮らしを始めてから、ネット通販をかなり使うようになった。

仕事が忙しく、買い物へ行く時間がなかったからだ。

その頃、毎回同じ配達員が来るようになった。

三十代くらいの男。

愛想はいい。

普通の人だった。

最初は何も気にしていなかった。

だが、少しずつ違和感が増えていった。

「新しい靴買ったんですね」

ある日、荷物を受け取った時そう言われた。

確かに玄関へ新しいスニーカーを置いていた。

まあ見えたのかと思った。

次の週。

「夜勤なんですか?」

と聞かれた。

理由を聞くと、

「最近いつも帰り遅いですよね」

と笑っていた。

そこから急に気持ち悪くなった。

だが、配達員なんて色んな家を見る。

偶然覚えられているだけかもしれない。

そう自分へ言い聞かせた。

ある夜。

仕事から帰宅すると、玄関前に小さい紙袋が置いてあった。

中には缶コーヒー。

そしてメモ。

『お疲れ様です』

差出人は書かれていない。

でも直感で分かった。

あの配達員だ。

怖くなり、宅配ボックスを使うようにした。

だが数日後、スマホへ知らない番号からメッセージが届いた。

『最近会えませんね』

鳥肌が立った。

番号はどこから漏れたのか分からない。

返信せずブロックした。

すると今度は非通知。

無言電話。

深夜。

何度も。

警察へ相談したが、証拠がない。

ある休日。

昼過ぎまで寝ていた。

突然、玄関の郵便受けがガタガタ鳴り始めた。

誰かが外から何かを詰め込んでいる。

怖くて動けなかった。

数分後、静かになる。

恐る恐る確認すると、郵便受けに大量の写真が押し込まれていた。

全部、自分。

スーパー。

駅。

会社。

そして最後。

カーテンの隙間から撮影された、寝ている自分の写真。

その瞬間、インターホンが鳴った。

モニターを見る。

あの配達員だった。

笑顔で手を振っている。

そして口だけ動かした。

『いつも受け取ってくれてありがとうございます』