深夜のライブ配信
大学時代、配信サイトでゲーム実況をしていた。
視聴者は少なく、多い時でも同時接続は二十人くらい。
完全に趣味だった。
その日は深夜二時頃から、ホラーゲーム配信をしていた。
視聴者も十人ほどしかいない。
コメントを拾いながら、だらだら進めていた。
異変が起きたのは配信開始から一時間後。
突然、コメント欄へこう流れた。
「後ろ」
最初はよくある悪ふざけだと思った。
ホラー配信では定番だ。
だから笑いながら流した。
だが次々同じコメントが流れ始めた。
「後ろ見ろ」
「誰いるの?」
「今動いた」
背筋が冷えた。
恐る恐る振り返る。
誰もいない。
安心した瞬間、別のコメントが流れた。
「違う、窓」
自分の部屋は二階。
窓の外はすぐ隣の建物の壁で、人が立てる場所なんてない。
だが配信画面を確認すると、確かに窓の外に何か映っていた。
白い顔。
しかもかなり近い。
自分は慌ててカーテンを閉めた。
視聴者は盛り上がっていた。
「やば」
「仕込み?」
「怖すぎる」
もちろん仕込みではない。
怖くなってその日の配信はすぐ終了した。
だが問題は翌日だった。
配信アーカイブを見返している時、奇妙なことに気づいた。
コメント欄だ。
昨日大量に流れていたはずの「後ろ」というコメントが、一件も存在していない。
ログにも残っていない。
不気味だったが、それ以上に気になったのは別の部分だった。
配信画面の端。
自分の背後。
閉まっているはずのクローゼットが、少しずつ開いていた。
その時、インターホンが鳴った。
宅配だった。
荷物を受け取り、送り状を見る。
差出人欄に、自分の名前が書かれていた。
中身はUSBメモリ一本だけ。
再生すると、真っ暗な映像が流れ始めた。
しばらくすると画面が明るくなる。
自分の部屋だった。
しかも、昨日配信していた時の映像。
だが撮影位置がおかしい。
窓の外から撮られていた。
二階の高さから。
最後、映像の中の自分がゆっくり振り返る。
その瞬間、撮影者の顔が窓ガラスへ映り込んだ。
知らない男だった。
笑っていた。
それ以来、配信はやめた。
でも時々、使っていない配信アカウントへ通知が来る。
「配信を開始しました」
もちろん、自分は何もしていない。