夜中のエレベーター
社会人になって最初に住んだマンションでの話。
築三十年くらいの古い建物だった。
六階建て。
住人も少なく、夜になるとかなり静かだった。
異変は引っ越して一週間後くらいから始まった。
夜中になると、エレベーターが勝手に動く。
「ウィーン……」
古いエレベーターだから音が響く。
最初は誰か帰宅してるんだろうと思っていた。
でも妙だった。
深夜三時。
毎日同じ時間に動く。
しかも、一階から六階まで全部止まる。
「カン」
「カン」
全階で止まる音が聞こえる。
ある夜、気になって確認しに行った。
ちょうど三時。
廊下で待つ。
すると本当にエレベーターが上がってきた。
五階。
停止。
「カン」
扉が開く。
誰もいない。
次、六階。
また停止。
誰もいない。
その後、一階へ戻っていった。
気味が悪くなって部屋へ戻った。
翌日、管理会社へ相談した。
だが、
「その時間、使用記録ないですね」
と言われた。
さらに奇妙なことを聞かされた。
そのエレベーター、昔事故があったらしい。
閉じ込め事故。
長時間停止して、中で一人亡くなったという噂。
それから数日後。
仕事帰りで疲れていた自分は、深夜三時頃にエレベーターへ乗ってしまった。
一階。
扉が閉まる。
六階を押す。
だが途中で停止した。
四階。
扉がゆっくり開く。
真っ暗な廊下。
誰もいない。
閉ボタンを押そうとした瞬間、外から声がした。
「乗ります」
女の声だった。
でも姿が見えない。
その瞬間、扉センサーが反応した。
何かが挟まったみたいに、閉まりかけた扉が開く。
でも誰もいない。
次の瞬間。
エレベーター内の鏡へ、女が映った。
自分の真後ろ。
振り返る。
誰もいない。
もう一度鏡を見る。
まだいる。
しかも少しずつ近づいていた。